「男だ〜いすき」:歪んだ愛も人間味じゃん?

オムニバス・短編集

「男だ〜いすき」読んだら、人間観察眼が鍛えられた話

「男だ〜いすき」というタイトルを最初に見た時、正直、ちょっと気恥ずかしいというか、どういう方向性の作品なんだろう?って思ったんですよ。西沢5ミリ先生の作品だし、きっとただの甘い恋愛漫画なわけがない、という確信めいた予感はあったんですけどね。案の定、というか期待通りというか、ページをめくっていくと「ああ、これこれ!この視点!」と膝を打つことしきりでした。人間のドロドロした部分とか、ちょっと情けないところとか、そういうのを笑いにして、でもどこか愛おしく描いちゃう西沢先生のセンス、本当にすごい。

短編集なので、色々な「男」と、それを取り巻く「女」の物語が詰まっていて、どれもこれも「あるある」と「いや、そこまでいく?」の綱渡りなんですよね。例えば、とある短編に出てくる「エリートだけどちょっと残念な男」の話。完璧に見える男性の、蓋を開けてみればだらしない部分とか、プライドだけが無駄に高いところとか、そういうのがめちゃくちゃリアルに描かれていて。正直、読むのがちょっと辛くなる瞬間もあったんですよ。私だったら絶対無理!って。でも、結局そういう人間臭さって、どこか惹かれる部分もあるじゃないですか。読んでいる間、「この主人公、絶対モテないだろうな」とか「いや、でもこういう人もいるよな」とか、感情がごちゃごちゃになってましたね。

別の話では、すごく控えめで真面目な「非モテ男」が主人公なんですけど、彼がちょっとしたきっかけで恋に落ちる過程がまた、絶妙に情けないんですよ。でも、その情けない姿がむしろ愛らしく見えてくるから不思議。自分の過去の恋愛とか、友達の恋愛話とかを思い出して、思わずフフッと笑っちゃう。でも、笑いながらも「こんなんで良いのか?」ってちょっとだけ心配になる、みたいな。この微妙な感情の揺れ動きこそが、西沢作品の真骨頂じゃないかなって、個人的には感じています。登場人物みんな、どこか「自分勝手」なんだけど、その自分勝手さが人間らしいというか。

それに、西沢先生の描く女性キャラもまた、たまらないんですよね。男性キャラに振り回されたり、逆に振り回したり、みんな個性が爆発してる。ちょっと強気な女性がいたり、すごく内気だけど芯がある女性がいたり。どのキャラクターも、どこかで実際にいそうな、妙にリアルな空気感をまとっているんです。だからこそ、感情移入しやすいし、読んでいて飽きない。このシーン、思わず「お前もな!」ってツッコミを入れたくなりましたもん。特に、女性が男性を見る時の「ちょっと冷めた目」みたいなのが、すごく上手く表現されていて、正直、「あー、わかる」ってなりました。

ギャグのセンスも抜群なんですよ。シュールな展開とか、不意打ちのセリフとか。真剣なシーンかと思いきや、突然ズッコケるような描写が入ったりして、ページをめくるたびに「次はどんな笑いを仕掛けてくるんだろう」ってワクワクする。でも、ただ笑わせるだけじゃなくて、その奥にはいつも「人間って、本当に面倒くさい生き物だよね」っていう諦めにも似た視線を感じるんですよね。それが、この作品全体の深みにつながってる気がする。だから、読み終わった後に単なるギャグ漫画を読んだ時とは違う、独特の余韻があるんです。

正直、全部の短編が「最高!」って手放しで褒められるかと言われると、個人的にはちょっと微妙な話もいくつかありました。いや、これは完全に私の好みの問題で、きっと別の人が読めば「この話が一番好き!」ってなるんだろうけど。例えば、ある短編の結末は、もう少し救いが欲しかったな、と感じたりもしましたね。でも、それも含めてこの作品の面白さというか、人間関係の複雑さを描く上で、あえて完璧なハッピーエンドじゃない選択をしているのかな、なんて深読みしちゃったりもしました。綺麗事だけじゃないのが、この漫画の魅力だし。

結局、「男だ〜いすき」って、タイトルはちょっと可愛いけど、中身は人間の本質を突き詰めた、ある種の毒をはらんだ作品だったんですよ。恋愛って、憧れとかドキドキだけじゃなくて、イライラしたり、落ち込んだり、時に絶望したり、そういう感情のジェットコースターでもあるじゃないですか。そういう部分を、西沢先生は真正面から、でもどこか斜に構えた感じで描いてる。だから、読んでいると自分の感情も一緒に揺さぶられるし、読み終わった後には、少しだけ人間観察のレベルが上がったような、そんな気分になるんですよね。

この漫画は、いわゆるキラキラした恋愛漫画を求めている人には向いてないかもしれません。むしろ、「人間のリアルな感情ってどんなだっけ?」とか、「恋愛におけるちょっとしたすれ違いを面白おかしく読みたい」って人には、かなり刺さるんじゃないかな。西沢5ミリ先生のファンなら、言わずもがな。まだ読んだことないって人も、この機会に彼の独特の世界観、触れてみないともったいないですよ。というか、きっとハマると思います。だって、人間って、いつだって面倒で、でもだからこそ面白い生き物なんだから。

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