「東京で、こじらせ愛。 【分冊版】(単話)」都会の病に響く?

ヒューマンドラマ

東京の空気、こじれた心。この愛、リアルすぎない?

いやー、正直ね、「東京で、こじらせ愛。 【分冊版】(単話)」っていうタイトルを見たとき、もうゾッとしちゃったんですよ。だって、東京で「こじらせ愛」って、それだけで何かしらのドラマが見えちゃうじゃないですか。しかも分冊版の単話でしょ? 一瞬で心をえぐられる覚悟で読んだわけです。都会の人間関係って、えてして複雑な形になりがちだし、そこで「愛」が絡んでくるとなると、もうただ事じゃないだろう、って思ったんですよね。

この作品、もぁらす/袴田十莉/グラフィニカさんの手によるものなんですが、絵の雰囲気とか、なんか独特ですよね。ストーリーとの親和性というか、登場人物の心の奥底にあるモヤモヤが、その絵柄からにじみ出てる感じ。まあ、絵のタッチって結構好みが分かれるところだと思うんですけど、個人的にはこの作品のテーマとはかなり合ってるんじゃないかなって思いました。変にキラキラしてないのがいい。むしろ、ちょっと濁ってるくらいがリアル、というか。都会の裏側で渦巻く感情を、飾らずに描こうとしてるんだなって、ひしひしと伝わってきたんですよね。

「こじらせ」って、結局何なんだろう?

「こじらせ愛」って言葉、最近よく聞くけど、結局何なんだろうね?って改めて考えさせられるんですよ、この作品を読んでると。なんかね、登場人物たちの思考回路が、他人事とは思えない部分がある。だって、みんな多かれ少なかれ、過去の失敗とか、コンプレックスとか、承認欲求とか、そういうのに囚われて、目の前の関係を素直に受け止められないことってあるじゃん? 例えば、ちょっとした嫉妬とか見栄が、どんどん積み重なって、本来の自分を見失っちゃう、みたいな。そういう経験、私にもあったし、なんかすごく心当たりがあるんですよね。

この単話では、その「こじらせ」が、どういう形で現れるのか、その断面を切り取ってる感じでした。都会の喧騒の中で、見栄を張ったり、自分を守ろうとしたりする中で、どんどん心が複雑になっていく。自分の気持ちを素直に伝えられないどころか、自分でも本当の気持ちが分からなくなってる、みたいな。正直、この自己矛盾、胸が痛いほどわかる。私が過去にやらかしたことと被るところもあって、ちょっと顔が熱くなったシーンもあったりして。なんであの時、あんな風に思っちゃったんだろう、みたいな後悔がフラッシュバックする感じ。

もちろん、共感だけじゃない。おいおい、それはさすがにないだろ、って突っ込みたくなるような言動も散見されるんですよ。でもね、それが人間臭いっていうか。完璧じゃないからこそ、生々しいヒューマンドラマになってる。悪くない、どころか、むしろ良い。私はそう思いました。登場人物たちの葛藤が、結構深掘りされているので、読み応えはありましたね。一見すると理解不能な行動も、背景を想像すると、ああ、わかるな、みたいな。そういう人間心理の複雑さを味わえる作品、ってことかな。

東京という舞台が、さらに愛をこじらせる

なんで「東京」なんだろう?って考えると、やっぱり「孤独」と「承認欲求」が深く関わってるんじゃないかな。地方から上京してきた人、成功を夢見る人、人との繋がりを求めるけど、なかなか深くまでいけない人。東京って、たくさんの人がいるのに、なぜか孤独を感じやすい場所だと思うんです。満員電車で押し合いへし合いなのに、誰もがお互いのことを見ていない、みたいな。そんな矛盾が、人間関係にも現れるってことなのかもしれない。

この作品では、そんな東京の持つ独特の空気が、登場人物たちの「こじらせ」をさらに増幅させてる気がする。例えば、SNSでキラキラした生活を見せつけ合ったり、競争が激しい中で自分を保とうとしたり。そういう中で生まれる歪んだ感情が、愛の形をいびつにしているんだろうなと。あ、これは別に東京をディスってるわけじゃないよ。ただ、そういう側面があるのは事実だよね、って話。あの、東京特有の、なんだろうな、冷たいけど熱い、みたいな空気感は、確かにある。その中で、普通の恋愛が、ちょっとしたきっかけで「こじらせ」に転じる、みたいな。

正直、もしこれが地方のゆったりした空気感だったら、この「こじらせ」方も少しは違ったんじゃないかな、なんて思っちゃいました。いや、それはそれで別の「こじらせ」方があるのかもしれないけど、この作品の描く煮詰まったような空気感は、やはり「東京」だからこそ、っていう気がするんだよね。ちょっと閉塞感すら感じるんですよ。だから、読んでいてしんどくなる人もいるかもしれない。そういう意味では、結構リアルさを追求してるんだな、って感じましたね。

単話で描くことの「もどかしさ」と「潔さ」

「分冊版(単話)」っていう形式も、この作品の性格を象徴してるのかもしれません。一話完結なので、ある程度の結論は出るんだけど、そこに至るまでの過程や、その後の余韻に浸る時間は短い。あっという間に読み終わっちゃう。だから、もっと読みたかったな、って思う人もいるはず。というか、私はもう少し深掘りしてほしいな、って正直感じた部分も少しありましたね。一つのエピソードに集中して描かれているからこそ、その「こじらせ」の瞬間の強度が高い、とも言えるんだけど。

でも、逆にその潔さがいい、とも言える。ある一つの「こじらせ」の瞬間を切り取って、読者に問いかけるような。続きは自分の心の中で想像してくれ、って言われてるような。そういう突き放された感じが、妙に心に残るんですよ。ちょっと不親切だけど、それがこの作品の持ち味なのかな、と。全てを説明しすぎないからこそ、読者が自分なりに考える余地が残される、みたいな。だから、読後も結構長い時間、頭の中で登場人物たちのことを考えてたんです。彼らはこれからどうなるんだろう?って。そういう意味では、この単話だけでも、充分なインパクトはあった、ってことかな。

ただね、個人的には、もう少しだけ背景の掘り下げがあっても良かったんじゃないかな、とは思った。なんでこの人はここまでこじらせちゃったんだろう?っていう、根源的な部分。もちろん、一話の中で全てを語るのは難しいのはわかる。でも、そこがもう少し見えれば、感情移入の度合いも変わってきたかも、なんてね。だって、人間って、理由もなくこじれるわけじゃないじゃん? 何かしらの原因が、きっとあるはずだから。その片鱗でも見せてくれたら、もっと作品にのめりこめた、なんていう、ちょっと贅沢な願望ですね。

総評:リアルに刺さる、だからこそ微妙に痛い

この「東京で、こじらせ愛。 【分冊版】(単話)」、読み終わった後、なんだか胸の中にモヤモヤが残りました。最高!とか、感動した!ってストレートに言える感じじゃなくて、むしろ、なんだか生々しい現実を突きつけられたような、そんな読後感なんですよね。なんか、心の中に小さなトゲが刺さったような、チクリとした感覚が残るというか。

登場人物たちの抱える闇や、人間関係の複雑さ、そして東京という舞台が生み出す独特の雰囲気が、見事に描かれていると思いました。特に、心の奥底に隠された「醜い」部分を、あからさまに描いてくる姿勢には、ちょっとゾッとしたけど、同時にすごいなって。なんか、自分の中にもあるそういう部分を、指摘されたような気分になった。人は誰しも、他人には見せない「こじらせ」を抱えているものなんだな、って再確認させられた感じです。

だから、万人におすすめできるか、と言われたら、ちょっと返答に困る。いや、悪くない作品なんだけど、読む人を選ぶというか。ハッピーエンドを求めてる人とか、スカッとしたい人には向かないかもしれない。でも、人間関係のドロドロした部分とか、都会のリアルな病巣みたいなものに興味がある人には、グッとくるものがあるんじゃないかな。むしろ、そういう「痛い」部分から目を背けずに向き合いたい人には、かなり深く刺さる作品だと思うんですよ。私も正直、読みながら何度も「うわぁ…」って声が出そうになりましたからね。

私は読んでみて、ちょっと考えさせられた。自分の恋愛観とか、人間関係に対する向き合い方とか。どうすれば「こじらせ」ずにいられるのか、あるいは「こじらせ」てしまった時にどうすればいいのか。なんだかんだで、そういうことを読者に考えさせる力がある作品って、結構貴重だと思うんですよ。だから、この単話、微妙に痛くて、でも見過ごせない、そんな一作でした。まあ、読んで損はない、少なくとも、何かは感じるはず。むしろ、自分の中の「こじらせ」を炙り出す、ちょっとしたカウンセリング体験、みたいな感じかもしれませんね。

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