表紙買いってやつ? 『あくまでクジャクの話です。』との出会い
正直、この漫画を手に取ったのはタイトルと表紙のインパクトが大きかったんですよ。「あくまでクジャクの話です。」って、いや、どういう意味だよ!って思わずツッコミたくなったし、表紙の絵も独特で。なんかこう、ちょっとすかした感じというか、自信満々だけどどこか寂しげな雰囲気が漂っていて、気がついたらレジに並んでましたね。こういう直感的な出会いって、結構ハズレがないことが多いんだけど、今回はどうだったかというと……これがまた、なかなか考えさせられる作品だったんですよ。
ジャンルはヒューマンドラマ、作者は小出もと貴先生。あんまり派手な宣伝はされてなかった印象だけど、こういう地味ながらも心にズシンとくる作品って、今の時代にこそ必要なんじゃないかなって、個人的には思うんですよね。特に、スマホとSNSが生活の一部になっている現代人にとっては、避けて通れないテーマを扱っているというか。だからこそ、読んでいて「うわ、痛い!」ってなる瞬間が多い作品でしたね。
見せかけの輝きと、その裏側にあるもの
この漫画の主人公は、SNSでキラキラした日常を投稿し、常に人からの「いいね」や評価を気にして生きている女性、橘カナメです。彼女のフィードは、高級レストランでの食事、ブランド品に囲まれた生活、そして完璧にポージングされた自分自身で溢れています。周りからは「憧れの存在」「完璧な人生を送ってる」と羨望の眼差しで見られているんですけど、正直、読んでいて「うわ、わかる」ってなった人は少なくないんじゃないかな。少なくとも僕は、かなりグサッとくる描写が多々ありましたね。だってさ、誰しもSNSでちょっと背伸びしたり、見栄を張ったりした経験ってあるじゃん?そういう人間の本質的な部分を、カナメというキャラクターを通してまざまざと見せつけられるんですよ。
でも、彼女の心の奥底は、実は全く満たされていないんです。常に他者の評価に依存していて、少しでも「いいね」が少なかったり、コメントが来なかったりすると不安で仕方がない。完璧な自分を演じるために、無理をして高級品を買い漁ったり、興味もないパーティーに出かけたり。そうやって作り上げた虚像と、実際の自分のギャップに苦しんでいる姿は、見ていて胸が締め付けられました。というか、正直な話、僕自身も「これ、自分のことじゃん」って思う瞬間があって、ページをめくる手が止まることが何度かありましたね。彼女が夜中に一人、誰も見ていないSNSの投稿を何度も見返して、ため息をつくシーンとか。あれはもう、いたたまれない気持ちになったなあ。
クジャクの羽と、人間の自己顕示欲
タイトルにある「クジャク」っていうのが、まさに見栄とか自己顕示欲の象徴として描かれているんです。クジャクって、オスが大きく美しい羽を広げてメスにアピールするじゃないですか。あれって、外敵から狙われやすくなるリスクを負ってまで、自分を大きく見せようとする行動なわけです。この漫画では、カナメがSNS上で見せる「完璧な自分」が、まさにそのクジャクの羽なんですよね。華やかで美しいけど、実は脆くて、時に自分を苦しめる原因にもなり得る。そういうメタファーがすごく効いていて、正直、最初はちょっと斜に構えてたんですけど、読み進めるうちに「なるほどな」って感心しちゃいました。
ある日、カナメは些細なきっかけで、自分を取り巻く虚飾の世界に疑問を持ち始めます。例えば、SNSで知り合った「友達」が、いざという時に全く頼りにならないとか、本当に困っている時に手を差し伸べてくれたのは、自分が普段「ダサい」と見下していた人だったとか。そういう出来事を経て、彼女は徐々に、自分を飾り立てることの意味を問い直していくんです。このあたりの展開は、急激なドラマチックさはないんだけど、じんわりと心に染み入る感じで、悪くないと思いました。むしろ、現実味があってよかったのかもしれない。特に、カナメの仕事仲間で、地味だけど実直な姿勢で仕事に取り組む先輩との会話は、彼女にとって大きな気づきを与えていたように見えました。SNS上の評価とは違う「確かな価値」みたいなものを、彼女はそこで感じたのかもしれないね。
心の揺らぎと、少しずつ変化する世界
物語の中盤から終盤にかけて、カナメはこれまでの生き方と決別しようとします。それは簡単なことじゃなくて、時には友人との亀裂を生んだり、自分のアイデンティティを見失いそうになったりもするんです。でも、その過程で彼女が出会う人たちとの交流が、彼女の心を少しずつ解き放っていくんですよね。特に印象的だったのは、SNSとは無縁の世界で、自分の好きなことを地道に続けている人たちとの出会いです。彼らは、誰かの評価を気にすることなく、ただ純粋に自分の「好き」を追求している。カナメは、そんな彼らを見て、「自分は何をしてきたんだろう」って、きっと感じたはずです。このシーン、思わず「がんばれ、カナメ!」って心の中で応援しちゃいました。なんか、自分もそういう時期があったから、余計に感情移入しちゃったのかもしれないですけどね。
というか、正直なところ、この変化の過程は決して平坦じゃないんですよ。カナメが自分を変えようとすることで、これまで築き上げてきた人間関係が崩れていくし、時には周囲から「どうしたの?らしくないよ」なんて言われたりして、すごく辛そうな顔をする場面もあって。でも、そこで彼女が選んだ道が、本当に彼女自身の本音に忠実なものだったから、読んでいるこっちも救われるというか、希望を感じましたね。SNS上の仮面を脱ぎ捨てて、すっぴんの自分を見せることの勇気、そしてそれを受け入れてくれる人たちの温かさ。そういうものが、じんわりと心に響きました。
「人間って、クジャクだよね」と問いかける一冊
最終的に、カナメがどんな答えを見つけるのかは、ぜひ実際に読んで確認してほしいんですけど、この作品は「自分を飾ること」や「他者からの評価」について、深く考えさせてくれます。完璧な自分を演じ続けることの虚しさ、そしてそこから解放された時に見えてくる本当の自由。現代社会で生きる私たちにとって、めちゃくちゃ響くテーマなんじゃないかなって。特に、SNS疲れを感じている人や、自分らしく生きるってどういうことだろう?って悩んでる人には、一度手に取ってみてほしい。いや、別に無理強いはしないけどね。でも、きっと何か心に引っかかるものがあるはずですよ。
ただ、一つだけ惜しかった点があるとしたら、カナメの過去の描写がもう少し欲しかったかな、ってことですね。なぜ彼女がそこまで承認欲求を拗らせてしまったのか、その根源的な理由がもう少し深掘りされていれば、よりキャラクターに奥行きが出たような気がします。もちろん、現在の彼女の苦悩だけでも十分に伝わってくるんですけど、個人的にはそのルーツにもう少し触れてほしかった、というのは正直な感想です。でも、だからこそ、読者それぞれが自分の経験に重ね合わせて解釈できる余地を残した、とも言えるのかもしれない。これはこれでアリなのかな、って今は思ってますけどね。あと、サブキャラクターの一人が、もう少し踏み込んだ役割を持っていたら、物語の厚みがもっと増したような気もしました。彼の存在自体は悪くないんだけど、もう一歩、カナメの転換点に関わるような出来事があったら、より良かったかな。
作者の小出もと貴先生の絵柄も、どこか寂しげで、でも温かい。そのバランスが、この作品のテーマとすごくマッチしていて、本当に見事だなって思いました。線の一本一本から、キャラクターの感情が伝わってくるような、そんな絵なんですよね。だからこそ、カナメの心の葛藤とか、少しずつ変化していく表情とかが、すごくリアルに感じられるんです。読後感は、スカッとするわけでも、感動で涙が止まらないわけでもないんだけど、心に静かに、でも確実に何かを残してくれる、そんな読後感でした。なんていうか、「ああ、生きてるってこういうことなんだよな」って、ちょっと背中を押されたような、そんな感覚。個人的には、こういうじんわりくるヒューマンドラマ、大好きなので、次回作も期待してます。
いやあ、しかし、人間って本当に複雑だよね。見栄を張りたい気持ちも、認められたい気持ちも、みんな持ってる。でも、それがどこまでいったら自分を苦しめることになるのか。そして、その苦しみからどうやって抜け出すのか。『あくまでクジャクの話です。』は、そんな普遍的な問いを僕たちに投げかけている、そんな作品だと思いました。悪くない、どころか、かなり良い作品だったと、僕は思いますね。自分を見つめ直すきっかけが欲しい、なんて人には、ぜひ読んでみてもらいたい一冊です。あ、いや、もちろん無理強いはしないけどさ。でも、本当に。
\ お得に読むならこちら /


コメント